手レよむダンス「東京ひっそり」

アーティスト: ​大西健太郎

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コンセプト

 本作品は、「サインポエム」(主に、手話をもとにした詩の朗読表現)や「シッチョイサ」という伝統的な盆踊りの形態から触発されて制作する踊る作品である。会場空間では、踊りの動きや振りを描くスケッチ制作から、即興的な踊りのかけ合いに至るまで、さまざまなプロセスが展開される。どの地点から参加するもよし、鑑賞するもよし、周遊しながら楽しむもよし。作業や踊りを通して、人の流れ、動き、表情が刻々と風景に映し出される。
 次の3つの章立てによって展開する。

1.手レよむダンス
 手レよむダンスとは、手話をもとにした詩の朗読表現「サインポエム」に着想した、主に手の表情や動きを用いた即興のパフォーマンス表現である。
〈プロセス〉
• 生活の中にあるものの形、テクスチャー、重み、温度など、手で知覚できる事柄を起点として、紙の上に線や形にして写しとる。
• 紙に描いた軌跡を再び手や指の動きでなぞることで、ダンスの振りを抽出していく。
• 色、動き、表情を伴うもの、気持ちや感情が交わるもの、記憶や空想が舞い込むなど、もとの文脈から派生した事象も混ぜ合わせる。

また、これらの作業を他者と共同制作することで、描くもののイメージやスケールがかき混ざり、踊りや振りの形が相乗的に反応しあい変化していく。

2.シッチョイサ
 新潟県十日町市莇平(あざみひら)地区の集落に古くから伝わる盆踊りの形式。歌と手拍子(音頭)だけで踊る。歌い手、踊り手、合いの手の三者が互いにかけ合う。
〈特徴〉
• 1節8拍の歌と、その間にかけ声が2度「シッチョイサ!」(1拍)+「ヨシタネ、ヨシタネ」(2拍)が入り、全体で11拍を刻むゆったりとしたペース。
• 踊りの振りも足踏みを基本としている。長時間かけて、ゆっくり歌い踊りながら徐々に盛り上がる仕組みになっている。
• 会場に熱が入ってくると、歌い手はアドリブの歌で場を盛り上げる。日ごろの鬱憤や不平不満、感謝や労い、笑いや怒りなどなど、踊りの中で即興的なかけ合いが起こる。

 手レよむダンスには、シッチョイサの呼吸(拍数、音頭の間)と踊りの足踏みの要素が織り込まれている。

3.「八の字」軌道線
 茶室の床上に描かれた八の字型の線は、踊りの軌道と方角を表している。これは、ミツバチの「八の字ダンス」に由来している。ミツバチは、蜜のある餌場を見つけると、巣に戻り「八の字ダンス」と呼ばれる方法で仲間に蜜の位置を伝える。八の字ダンスは、翅を上下に震動させると同時に体(お尻)を左右に振るわせ、巣の上で八の字を描きながら行う。振動の回数と歩く軌道の方角によって、巣から餌場までの距離、太陽の位置を起点に餌場の角度を仲間に伝えるのだ。巣の中は、光が遮断されているため、空気の振動を駆使して、記号化された情報をダンスで伝播しているのだ。

 茶室の床に描かれた八の字の直線部分は、毎刻の太陽の位置を起点にして、茶室とシッチョイサの発祥地である新潟県の莇平地区を結ぶ角度を向いている。毎年行われる集落のお祭りに対するオマージュを表すと同時に、「遠く隔たった場所」「会えない人」、あるいは「未だ来ていない(これからの)時間」を想起する。そして、手レよむダンスを踊りながら線の上を歩くことで、それぞれの振りのもとになっている人、もの、場所、風景、記憶、感情、空想、遊び…が浮かび上がり、太陽によって八の字状に踊る手のひらが照射される。

実施方法

●「手レ譜」(踊りの振りや動きを記号化したスケッチ)を作る
・ 白い線で四つのマス目(四コマ)が描かれた台紙(群青色)を受け取る。
・ 白いダーマートグラフペンを使って、それぞれが自分の「手レ譜」を描き込む。
・ アーティストによる描き方の導入を見る。

 

例「アイスクリーム」「冷蔵庫に入っている」「思い出した」「美味しかった」など、2〜3作を紹介する。
アーティストによる導入を受け、または茶室に展示してある他の来場者が描いた(蓄積)を見ながら、絵や文字などで描く。
・ 出来上がった「手レ譜」は、次の3つの扱いをする。
1. 参加者が持ち帰る
2. 譜を用いて「手レよむダンス」を踊る(※踊りの後、1or3)
3. 茶室に残していく

●「手レよむダンス」を踊る
・ 茶室の床には、大きな八の字型の線が描かれている。これが踊りの軌道線となっている。
・ 八の字軌道線の直線部(中央)は、ある方向を向いている。国立新美術館が位置する六本木から見て、新潟県莇平地区の方へ向いて描かれている。
・ 参加者は、互いに4拍子の拍で手を打ち鳴らし、複数人が大きな輪となって、手を振りながら線の上を八の字に移動する。
・ 上を繰り返し、順番に直線位置に差し掛かった人から、それぞれの手レよむダンスを踊り、他は踊り手に対して手拍子で合いの手を入れてかけ合う。
・ はじめは、各々がワークショップで作った振りを踊る。次第に、合いの手の手拍子や他の動きに触発され、徐々に振りや動きがかけ合わさり、即興的に変化していく。

会場内地図

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プログラム詳細

参加人数

最大4名(ワークショップの全てのプロセスに参加希望の場合)

※ワークショップ作業に参加せず展示物の鑑賞をする方は、最大人数を基準に都度対応します。

参加方法

事前に準備するもの:特になし

 

完成した作品の扱い

できあがった作品は、次のいずれかの取り扱いとなります。

1. 参加者がその場で持ち帰る

2. 譜を用いて「手レよむダンス」を踊る(※踊りの後、1or3)

3. 茶室に残していく(※作品の保管はいたしません)

参加者へのお願い・ご注意

展示空間内では靴(及びその上の靴カバー)でお上がりください。設備の都合上、裸足になるとけがをする危険がありますので十分ご注意下さい。靴下や靴カバーのみの着用では不十分ですので、靴+靴カバーまたは、上履きでお願いいたします。

​タイムテーブル

会期中、アーティストの在廊時に実施します。ワークショップを実施しない時にも、茶室は展示としてお楽しみいただけます。

作家在廊日:会期中(7月24日、25日、28日、29日、8月1日、4日、8日、9日を除く)

※ 各プログラムの内容やタイムテーブルなどは、予告なく変更となる可能性がございます。

「3密」(密閉・密集・密接)を避けるため、入場制限する場合もございます。予めご了承ください。

アーティストについて

大西健太郎

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ダンサー。1985年生まれ。東京藝術大学大学院先端芸術表現科修了後、東京・谷中界隈を活動拠点とし、まち中でのダンス・パフォーマンスシリーズ「風」を開始する。その場所・ひと・習慣の魅力と出会い「こころがおどる」ことを求めつづけるパフォーマー。2011年に東京都、アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)と一般社団法人谷中のおかっての共催によるこども創作教室〈ぐるぐるミックス〉の立ち上げより、ファシリテーター、統括ディレクターを務める。2014年より〈風と遊びの研究所〉を開設。板橋区立小茂根福祉園にて他者との共同創作によってつくり出す参加型パフォーマンス〈「お」ダンス プロジェクト〉を展開。2018年南米エクアドルにて「TURN-LA TOLA」の参加アーティストとして、地域住民と共同パフォーマンス〈El Azabiro de La Tola〉の公演をおこなう。

http://kentaronishi.wordpress.com

アーティストのこれまでのTURNでの活動:大西健太郎